マッチングビジネスで起業するのは難しい?収益モデルと失敗しない始め方を解説

「企業とフリーランスをつなぐサービスを作れば、成約するたびに手数料が入る」
「自社が持っている顧客ネットワークを利用して、新しいマッチングサービスを作れないだろうか」
このような発想から、マッチングビジネスでの起業を考えるケースがあります。
マッチングビジネスは、自社で大量の商品を仕入れなくても事業化できる点が魅力です。
取引数が増えれば、成約手数料や掲載料を積み上げられるモデルも作れます。
一方、難しいのはシステム開発ではなく、その前後です。
仕事を探す人だけ集めても求人企業がいなければ成立しません。発注企業を集めても、条件に合う受注会社がいなければ利用者は戻ってきません。
マーケットプレイスでは、買い手が増えるほど売り手にとっての価値が高まり、売り手が増えるほど買い手にも魅力が増すネットワーク効果があります。ただし、それは一定数の利用者と取引が存在して初めて働きます。
マッチングビジネスで難しいのはサイトを作ることではなく、「条件の合う相手が見つかり、実際に取引が発生する状態」を作ることです。
マッチングビジネスとは

マッチングビジネスは、需要を持つ人と供給できる人をつなぎ、その取引や利用から収益を得るビジネスです。
対象は恋愛マッチングだけではありません。たとえば、
| 需要側 | 供給側 |
|---|---|
| 人材を採用したい企業 | 仕事を探す人 |
| システムを発注したい企業 | 開発会社 |
| 家を売りたい人 | 家を買いたい人 |
| 専門家へ相談したい企業 | 弁護士・税理士など |
| 修理を依頼したい人 | 修理業者 |
など、幅広い業界で成り立ちます。
誰かと誰かをつないで収益化する
一般的な物販なら、
商品を仕入れる
↓
販売する
↓
販売価格と原価の差が利益になる
という構造です。マッチングビジネスでは、
需要側を集める
↓
供給側を集める
↓
条件に合う相手をつなぐ
↓
問い合わせ・契約・利用が発生する
↓
料金を受け取る
という流れになります。
自社が商品そのものを提供しなくても事業を作れる点が特徴です。
在庫を持たなくてもコストはかかる
「在庫を持たないから低コストで起業できる」と考えると、実際の事業計画との差が出ます。
商品在庫はなくても、
- 需要側を集める広告費
- 供給側を開拓する営業費
- Webシステムの開発・保守費
- 審査・本人確認
- 問い合わせ対応
- トラブル対応
- コンテンツ制作
などが必要です。
特に立ち上げ直後は取引数が少ないため、売上より先に営業費・広告費・人件費が出ていくケースがあります。
会員数より流動性が重要
マッチングサービスでは「会員10万人」という数字だけでは事業の状態を判断できません。
たとえば建設会社と協力会社をつなぐサイトに1万社が登録していても、
「大阪府で今月、防水工事を受けられる会社」が1社しかなければ、その条件で探す発注者には使いにくいサービスです。
反対に登録企業が500社でも、対象地域や業種を絞ったことで毎月多くの案件が成立するなら、事業として価値があります。
登録数ではなく、利用者が必要なタイミングで条件の合う相手を見つけられるかを見る必要があります。
起業が難しい5つの理由

マッチングビジネスには、一般的なWebメディアやECとは違う難しさがあります。
中でも起業時に問題になりやすいのが、需要と供給を同時に立ち上げることです。
需要と供給を同時に集める
求人サイトを例にします。
求職者が100人登録しても、求人が3件しかなければ使い続けてもらえません。
一方、100社から求人を集めても求職者がいなければ、企業から、
「掲載しても応募が来ない」
と言われます。
これは二面市場の典型的な「鶏と卵」問題です。
新しいプラットフォームでは、買い手と売り手のどちらから立ち上げるか、あるいは両方を同時に集めるかを設計する必要があります。
起業前に考えるべきなのは、「市場には企業が何万社ある」ではなく、「サービス開始日に需要側と供給側をそれぞれ何件確保できるか」です。
登録しても取引されない
会員登録をKPIにすると、事業が順調に見えることがあります。たとえば、
登録企業:1,000社
月間ログイン企業:300社
問い合わせ:50件
商談:20件
成約:5件
という状態です。
1,000社登録していても、月5件しか成約していません。
売上が成約手数料から発生するなら、見るべきなのは登録社数より5件の方です。
実際の運営では、
登録
↓
検索
↓
詳細閲覧
↓
問い合わせ
↓
商談
↓
成約
↓
再利用
まで計測します。
どこで大きく減っているかによって、改善すべき場所が変わります。
集客費を回収できない
利用者を集めるため、広告へ100万円使ったとします。
新規顧客が200人なら、100万円÷200人=5,000円で1人を獲得しています。
これがCACです。
一方、その利用者がサービスを使っている期間に平均2,000円しか粗利益を生まないなら、広告費を回収できません。
反対に平均3万円の粗利益を生むなら、5,000円の獲得費を使える余地があります。
マッチングサービスでは利用者が増えるほど有利になる面がありますが、赤字で利用者を増やしているだけなら、規模を拡大するほど資金が減ります。
起業時には、「会員を何人集められるか」と同時に、「1人集めるために何円まで使えるか」を計算します。
サイト外で直接取引される
マッチングビジネス特有の問題が、サイト外取引です。たとえば、
発注企業がサイトで制作会社を発見
↓
初回はサイト経由で契約
↓
2回目からメールで直接契約
となれば、プラットフォームには2回目以降の手数料が入りません。
これはディスインターミディエーションと呼ばれ、二面型マーケットプレイスの代表的な課題として研究されています。
単純に、「サイト外取引は禁止」と規約へ書くだけでは十分とは限りません。
サイト内に、
- 決済・支払い管理
- 契約書管理
- 取引履歴
- 評価・口コミ
- トラブル対応
- 保証
- 継続案件管理
などを設けて、「直接取引するより、このサービスを使い続けた方が便利」という状態を作る方法があります。
業界によって規制がある
マッチングサイトという名称であっても、実際の業務内容によって許認可が必要になる場合があります。
分かりやすい例が人材です。
厚生労働省は、求人・求職の申し込みを受け、雇用関係の成立をあっせんする行為を「職業紹介」と定義しており、有料職業紹介事業は許可制です。
また、AIなどを使って自動的に処理していても、実際に行っている行為によっては職業紹介の許可が必要になることがあります。厚生労働省も、募集情報等提供と職業紹介の区分について現在の考え方を示しています。
ほかにも、
不動産
旅行
金融
決済
などはサービス内容によって関連法規を確認します。
「Webサイトなので許可は不要」とは限りません。
主な収益モデル

マッチングビジネスでは、誰から・いつ料金を受け取るかによって必要な事業規模が変わります。
代表的な収益モデルを比較します。
成約手数料
実際に契約・売買・予約などが成立したときに料金を受け取る方法です。たとえば、
平均取引額:30万円
手数料率:10%
なら、1成約当たりの売上は3万円です。
月100万円の運営費を回収するなら、100万円÷3万円=約34件の成約が必要です。
実際には決済費や変動費もあるため、黒字化にはさらに多くの取引が必要になります。
利用者側から見ると、「成果が出たときだけ支払う」ため導入しやすい一方、運営側は取引が成立するまで売上になりません。
さらに高い手数料を設定すると、サイト外取引へ移る理由にもなります。
月額・掲載課金
供給側企業などから毎月一定額を受け取ります。
たとえば、月額3万円×掲載企業50社=月150万円です。
成約数に左右されにくい一方、掲載企業からすると、
「今月問い合わせが0件だったのに3万円払う」
ことがあります。継続してもらうには、
ページ閲覧数
問い合わせ数
応募数
商談数
などから、料金を払う理由を示す必要があります。
問い合わせ課金
問い合わせや応募が発生した段階で料金を受け取ります。たとえば、
1問い合わせ:1万円
月100件
なら売上100万円です。
成約するまで料金が発生しない成果報酬より、運営側は早い段階で売上を計上できます。
一方、企業側から、
「営業目的の問い合わせだった」
「対象エリア外だった」
「同じユーザーから重複している」
といった異議が出ることがあります。
何を有効問い合わせとするかを事前に決めます。
会員・オプション課金
利用者へ基本機能を無料提供し、追加機能に料金を設定する方法です。
たとえば、
無料:
基本検索・プロフィール閲覧
有料:
詳細検索・スカウト・閲覧履歴・優先表示
という設計です。
月額課金する場合は、「無料版だけでもサービスとして成立する」ことと、「有料版に変える明確な理由がある」ことの両方が必要です。
複数モデルの併用
収益モデルを組み合わせる方法もあります。たとえば、
基本掲載:無料
上位表示:月2万円
問い合わせ:1件5,000円
成約:5%
という設計です。
ただし、起業直後から課金ポイントを増やしすぎると、「結局いくらかかるサービスなのか」が分かりにくくなります。
最初は顧客が価値を理解しやすい1つか2つの課金方法から検証し、利用実績を見ながら追加する方が料金体系を調整しやすくなります。
起業に向いている条件

マッチングビジネスが難しいからといって、すべての新規参入が不向きなわけではありません。
特に既存事業から派生して始める場合は、完全なゼロから始める場合とは条件が違います。
片側の顧客をすでに持っている
たとえば建設会社が、
「協力会社を探してほしい」
という相談を日常的に受けているなら、すでに需要側との接点があります。
逆に業界団体などで施工会社300社とつながっているなら、供給側を持っています。
マッチングサービスで最初に苦労するのは、需要側と供給側の両方がゼロである状態です。
すでに片側を確保しているなら、残りの一方へ営業を集中できます。
既存顧客・取引先・会員などを片側のユーザーとして利用できる会社は、完全なゼロから始める会社より立ち上げ条件を作りやすくなります。
解決したい不便を知っている
「マッチングサービスが流行っているから」という理由だけで市場を選ぶと、機能設計が抽象的になります。
一方、
「顧客から毎月、設備修理業者を紹介してほしいと言われる」
「営業担当者がExcelから毎回外注先を探している」
という会社なら、すでに解決すべき問題が見えています。
この場合、
誰が困っているか
現在どう解決しているか
いくらなら払うか
を実際の顧客へ確認できます。
単に市場規模が大きい領域より、自社が具体的な課題を知っている領域の方が検証しやすくなります。
1件の取引価値が高い
1件当たりの売上も採算へ大きく影響します。
たとえば1成約から500円しか得られないサービスでは、月100万円売るために2,000件の成約が必要です。
一方、1件5万円なら20件です。
もちろん単価が高ければ簡単という意味ではありません。
高額取引ほど、
営業
審査
専門サポート
契約調整
などの工数が増えることもあります。
ただ、初期利用者が少ないBtoBマッチングでは、1件当たりの取引価値を確認しておく意味は大きくなります。
運営へ人手をかけられる
マッチングサイトは公開直後から完全自動化できるとは限りません。
初期には、
「この会社なら合いそうなので紹介しよう」
「問い合わせが来たが条件が合わないので別の企業を案内しよう」
「登録企業の情報が不足しているので電話で確認しよう」
といった運営が発生します。
最初からアルゴリズムですべて自動化するより、人が間に入った方が利用者の需要を把握できるケースもあります。
そこで蓄積した条件を、後から検索・レコメンド機能へ落とし込む方法もあります。
起業するならこの順番

マッチングビジネスを始めるとき、最初の仕事を「システム開発」にしない方がよいケースがあります。
まず本当に取引が成立するかを確かめます。
誰と誰をつなぐか決める
「企業と企業をつなぐ」ではまだ広すぎます。
たとえば、
大阪の製造会社と設備修理会社
飲食店と短期人材
介護施設と専門業者
EC運営会社と物流会社
まで具体化します。
さらに、どの条件で相手を選ぶかも決めます。
設備修理なら、
対応エリア
機械の種類
対応可能時間
保有資格
価格帯
などです。
この条件が、将来の検索項目やプロフィール項目になります。
人力でマッチングする
起業直後は、フォームと表計算ソフトだけでも試せます。
たとえば、
発注企業20社へヒアリング
↓
受注企業50社を集める
↓
フォームで依頼内容を受け付ける
↓
担当者が条件に合う3社を紹介
↓
商談・成約を記録する
という方法です。
ここで月10件の相談が入り、3件成約するなら次の改善材料ができます。
逆に半年試して問い合わせがほとんど来ないなら、「検索機能が足りない」より、「そもそもこのサービスが必要とされているか」を見直せます。
まだ、
誰と誰をつなぐのか
どちらから料金をもらうのか
既存サービスとの違いは何か
最初の利用者をどこから集めるのか
が固まっていない場合は、企画中のWebサービスを整理するフォームもあります。
電話番号は不要です。回答後は原則として簡単なフィードバックメールを1回お送りし、ご希望がない限り継続的な営業メールや打ち合わせを前提とした案内は行っていません。
損益分岐点を計算する
人力で取引が成立したら、数字へ置き換えます。
仮に、
平均取引額:20万円
成約手数料:10%
1成約の売上:2万円
とします。
毎月のコストが、
広告:30万円
営業・運営:40万円
システム・保守:20万円
その他:10万円
で合計100万円なら、100万円÷2万円=50件の成約が必要です。
さらに、問い合わせ→成約率が20%なら、50件÷20%=250件の問い合わせが必要です。
この数字を出すと、「月250件の有効問い合わせを集められるのか」という現実的な判断ができます。
開発費をいくらに抑えるかだけでなく、黒字に必要な取引件数を先に計算した方が事業判断に使えます。
最小限の機能で公開する
人力で需要を確認した後、必要な部分からシステム化します。
初期なら、
- 会員登録
- プロフィール
- 案件登録
- 条件検索
- 問い合わせ・応募
- 管理画面
程度から始められるケースがあります。
まだ利用者が少ないなら、WordPressやノーコード・ローコードを使って低コストで検証する選択肢もあります。
一方、
複数の会員権限
複雑な条件検索
大量のデータ
決済
メッセージ
外部API連携
独自の審査・マッチングロジック
などが必要になれば、専用のWebシステムを検討します。
WordPressやノーコードなら必ず後から作り直しになるわけではありません。必要な機能・データ量・セキュリティ・運用方法を見て判断します。
取引が増えてから拡張する
人力運営を続けていると、
「登録企業が500社になり、担当者が探すだけで時間がかかる」
「案件ごとに同じ条件確認を繰り返している」
「企業から自分でプロフィールを更新したいと言われる」
といった課題が出ます。
この段階になると、システム化によって削減できる業務が明確です。
セルバでは、データベース・会員・検索・応募・問い合わせなどを持つポータルサイトやビジネスマッチングサイトの構築に対応しています。現在の公式ページでは120社以上の支援実績と、会員数30万人・月売上9億円規模のポータルサイト開発・運用実績を掲載しています。
これらの数字は同じ成果を保証するものではありませんが、大量の会員・情報を扱うサービスへ成長した場合に、どのような構成が必要になるかを検討する材料にはなります。
すでに需要を確認できていて、会員管理や検索・マッチングをシステム化する段階なら、以下で対応機能を確認できます。
最初から高機能なマッチングシステムを作るか、簡易版から始めるかは、現在の取引件数と今後必要になる機能を基に決める方が現実的です。
まとめ
- マッチングビジネスは需要側と供給側の両方が必要で、一定の取引密度を作るまでが難しい
- 収益モデルは成約手数料・掲載課金・問い合わせ課金・会員課金などがあり、必要取引件数から逆算して選ぶ
- 起業前に人力で実際のマッチングを試し、需要・成約率・課金意欲を確認してからシステム化する方法もある
マッチングビジネスは、サイトを作るだけで自動的に手数料が積み上がる事業ではありません。一方、すでに顧客・取引先との接点があり、現場で紹介需要が発生している会社なら、その関係を事業化できる余地があります。
「何を作るか」を決める前に、誰と誰をつなぎ、1件成立するといくら残り、毎月何件成立すれば黒字になるのかを整理すると、起業すべきかどうかを判断しやすくなります。