「トライアル雇用が最悪」はネットのデマ。8割が無期雇用へ移行

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職歴にブランクがある人を対象とした「トライアル雇用」は、3ヶ月間、職場に勤務しながら企業にポテンシャルを評価してもらえるので、未経験者採用でもミスマッチを防ぎやすい採用方法です。

しかし、ネットでは「トライアル雇用は最悪」「給料が低い」などネガティブなワードが並んでいます。
本当にトライアル雇用は最悪なのでしょうか。

今回はトライアル雇用の無期雇用(本採用)への移行率のデータをもとに、実態を解説します。

目次

トライアル雇用とは

トライアル雇用について、厚生労働省のHPでは次のように説明しています。

「トライアル雇用」は、職業経験の不足などから就職が困難な求職者等を原則3か月間試行雇用することにより、その適性や能力を見極め、期間の定めのない雇用への移行のきっかけとしていただくことを目的とした制度

厚生労働省「トライアル雇用

つまり、トライアル雇用とは働いた経験ではなくその人のポテンシャルを評価し、経歴が原因で就職が難しい人の就職を促す制度です。

「トライアル雇用求人」の探し方

求職者はハローワークで「トライアル雇用併用求人」に応募することで、この制度を活用できます。

STEP
ハローワークで詳細検索条件を開く

ハローワークインターネットサービスの「求人検索画面」から「詳細検索条件」をクリック。

STEP
「トライアル雇用併用求人」にチェック

「その他」欄の「トライアル雇用併用求人」にチェックを入れて、[OK]ボタンを押す。

他に、「フリーワード」欄に「トライアル雇用」と入力して検索する方法もあります。

トライアル雇用のメリットとデメリット

トライアル雇用のメリット・デメリットをまとめると次のようになります。

メリットデメリット
経験やスキルがなくても応募可不採用の場合、3ヶ月だけの職歴が残る
職場の雰囲気・業務を体験できる=ミスマッチが少ない複数の企業に応募できない

トライアル雇用の最大のメリットは職歴にブランクがあっても応募ができる点です。
未経験を対象としているので、職務経歴やスキルがなくても面接を受けることができます
また、トライアル期間は、実際に職場で働くので職場の雰囲気や業務を体験できるのでミスマッチが起きにくいです。

一方、不採用の場合は3ヶ月という短期間の職歴が残ってしまうことがデメリットとして挙げられます。

ただし、解雇ではなく「契約期間満了」となるので、その後の転職活動で「契約期間満了のため」と答えれば特に問題はありません

Q. トライアル雇用の期間満了で常用雇用しなかった場合、退職理由は何になりますか?

A. トライアル雇用で常用雇用しない場合、会社からの申し出であっても、退職理由は「契約期間満了」です。

就業規則の竹内社労士事務所「トライアル雇用の退職理由

トライアル雇用の注意点として「複数の企業に応募できない」ことが挙げられます。
これはハローワークが求職者に対して同時に複数のトライアル雇用の紹介ができないことや、トライアル雇用の選考中に新たなトライアル雇用の紹介ができないことが関係しています。

複数の企業を比較したい人はトライアル雇用ではなく、一般の求人に応募するのをおすすめします

無期雇用への移行率は約8割

厚生労働省が2018年に発表した資料によると、トライアル雇用からの無期雇用への移行率は約8割となっています。

常用雇用移行率=無期雇用への移行率(厚生労働省2018年度「トライアル雇用助成金事業」より引用)

これらから、多くの求職者が未経験から無期雇用への移行に成功していることが分かります。

無期雇用へ移行しなかった理由「自己都合」が最多

無期雇用へ移行しなかった人の理由は何なのでしょうか。平成29年度を例に見てみましょう。

平成29年度、常用雇用(無期雇用)へ移行したのは全体の74.4%でした。残りの24.6%の内訳は次の通りです。

厚生労働省2018年度「トライアル雇用助成金事業」をもとに作成

グラフから分かるように、無期雇用へ移行しなかった理由として最も挙げられたのは「求職者の自己都合」(約57%)でした。

辞めた人の半数以上が、試用期間中に自己都合で辞めているんですね

トライアル雇用で会社からクビになるケースは100人に2人しかいない
平成29年度にトライアル雇用を活用した求職者全体を100人とすると、次のような内訳になる。
 
 常用雇用へ移行した人:74人
 移行しなかった人:26人
  自己都合:15人
  ・
移行要件を満たさない:3人
  ・
本人からの申出:6人
  ・
事業主からの申出2人

企業からの申し出で継続雇用されなかった(いわゆるクビにされた)人は、100人中たったの2人ということになる。

トライアル雇用が最悪と言われる理由

トライアル雇用にネガティブな声が挙がっている理由には次のようなものがあります。

  1. ブラック求人が多いから
  2. 給料が低いから
  3. 助成金目当ての求人が多いから
  4. 使い捨てにされるから

ブラック求人が多いから

トライアル雇用は主にハローワークに登録している企業が利用できる制度です。
そのため、民間の求人媒体に掲載できない(=求人にお金をかけられない)ブラック企業が多いと言われています。

ただし、求人ごとに雇用条件は千差万別なので「トライアル雇用だからブラック」と決めつけるのは早計です。
まずは自分の地域の求人票をチェックしてみましょう。

給料が低いから

トライアル雇用では給与の条件がないので、もらえう給与は企業ごとに異なります。

ただ、ハローワークに登録されている求人の給与が全体的に低い傾向があるので、「トライアル雇用=給与が低い」というイメージがあるのでしょう。
ハローワークはそもそも「就職支援」を目的とした施設であり、転職エージェントのようにキャリアアップを目的としたサポートを行っているわけではないため、スタート時の給与が低めなのも、ある程度なら仕方のない部分でもあります。

十分な給与がもらえる求人もあるので、一度自分の地域の求人を検索するのをおすすめします。

助成金目当ての求人が多いから

企業側は最初から採用するつもりがなく、国からの助成金を目的としてトライアル雇用制度を利用するケースがある、というもの。

しかしこれは現実的な理由とは言えません。
トライアル助成金は対象者1人につき4万円が月額で支給されます。
つまり3ヶ月のトライアル期間で企業は12万円の助成金しか得られないのです。

トライアル雇用の従業員には通常より研修や教育コストがかかる(もちろん給与もかかる)ことを考えると、企業にとって助成金の大きなリターンはないのです。

使い捨てにされるから

トライアル期間終了後に正社員への登用を見送られ、新たなトライアル雇用者を募集するという人材の使い捨てが起こっているという理由です。

しかし、トライアル雇用であっても正当な理由なしに従業員を解雇することはできません

事実、平成29年度の企業(事業主)の申出による常用雇用への移行中止は全体のわずか1.6%で、使い捨てが常態化しているとは考えにくいです。

トライアル雇用でクビになるケース

トライアル雇用であっても事業者が従業員を解雇するには、正当な理由が必要です。

労働契約法では、解雇には「客観的に合理的な理由」と「社会通念上の相当性」を要するとしています。

労働契約法 第15条
解雇は、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして、無効とする。

e-GOV法令検索「労働契約法

つまり、トライアル雇用ではきちんと仕事をしていれば問題なく常用雇用へ移行できると考えて大丈夫なのです。
では、解雇になるのはどのようなケースなのでしょうか。

遅刻・欠勤が多い、ルールを守れない

始業時間を守れない、突然の欠勤が頻繁にある、SNSで内部事情の漏えいなど、基本的な勤務ルールが守れない場合はトライアル期間で契約終了される正当な理由となります。

トライアル雇用でも社会人としてのマナーが求められます。

勤務態度が悪い

「勤務態度が悪い」と言っても、「上司が気に入らない態度をとった」くらいの理由では解雇できません。

上司からの指示に従わない、同僚とのコミュニケーションを取らない、私語が多い、スマートフォンを見てばかりで仕事をしないなど、業務に支障が出ていると判断される場合は、トライアル期間での契約終了を検討される可能性が高くなります。

能力不足

基本的なビジネススキルの不足や、業務に必要な知識・技術があるという前提で雇用されたのに、実際は身についていなかった場合は、トライアル期間での契約終了となることがあります。
特に改善の見込みが低いと判断された場合は、本採用を見送られる可能性が高くなります。

トライアル雇用の面接で落ちる理由

面接は採用選考において最も重要な場面の一つで、これはトライアル雇用の面接でも同じです。
ここでは、よくある面接での失敗理由を詳しく解説します。

ビジネスマナーができていない

面接での第一印象を決定づけるビジネスマナーは、合否を分ける重要な要素。

スーツの着こなしや髪型が整っていないなどの身だしなみの乱れ、面接会場への到着が遅いといった時間管理の甘さ、敬語の使い方が不適切で砕けた言葉を使用するなど、基本的なマナーの欠如は、社会人としての適性を大きく疑われる原因となります。

第一印象の失敗は、その後の挽回が難しいので気をつけましょう。

会社や業務内容を理解していない

事前の企業研究不足は、「志望度が低い」と企業にマイナスに捉えられてしまいます

まずは会社の事業内容や強み、最近のニュースを把握することから始めましょう。
トライアル雇用は未経験を前提としているので、アピールできるのは「この企業で働きたい」という熱意やポテンシャルです。

質問に対する答えがズレている・会話が噛み合わない

面接の質問に対してズレた回答をしたり、会話が噛み合わないのは、コミュニケーション能力の不足として評価されます。

志望動機が具体性に欠けていたり、自己PRと職務内容が結びついていなかったりする場合も要注意です。
面接は緊張するものですが、落ち着いて質問の意図を理解し、論理的に質問に答えましょう。

まとめ

本記事では「トライアル雇用が最悪」という声について実態をもとに検証しました。
ネットではネガティブな意見が注目されがちですが、実際のデータを見てみるとトライアル雇用が最悪というわけではないことが分かったと思います。

トライアル雇用はポテンシャルがあるのにも関わらず病気や妊娠・出産等で経歴にブランクがあり、就職が不利になっている方の受け皿となる制度です。
無期雇用へのチャンスを掴む1つの選択肢として、利用してみてはいかがでしょうか?

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取材からインタビュー記事の公開に至るまで、費用は一切かかりません。

自分ではありふれた経歴だと思っていても、過去のあなたと同じ境遇にある方のキャリアの道しるべになるかもしれません。
異業種に転職された方、フリーターから正社員になられた方、ブランクから復帰された方、未経験からフルリモートの仕事に就かれた方など、様々なキャリアの方をお待ちしています!

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この記事を書いた人

キャリアクラフトは大阪・東京を拠点に20年、人材事業やシステム開発を行ってきたセルバが運営する「新しい働き方を創るメディア」です。
従来の新卒や転職だけでなく、フリーランスやパラレルキャリアなどの新しい働き方や、リモートワークや時短勤務などの新しく浸透しつつある制度について発信しています。
自身のキャリアに迷っている人のお役に立てればと考えています。

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