あなたのキャリアについて、インタビューさせていただけませんか?
自社の宣伝をしたい方大歓迎!ぜひキャリアクラフトにインタビューさせてください。
取材からインタビュー記事の公開に至るまで、費用は一切かかりません。
自分ではありふれた経歴だと思っていても、過去のあなたと同じ境遇にある方のキャリアの道しるべになるかもしれません。
異業種に転職された方、フリーターから正社員になられた方、ブランクから復帰された方、未経験からフルリモートの仕事に就かれた方など、様々なキャリアの方をお待ちしています!
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松山東雲短期大学現代ビジネス学科の川北輝先生は、助教として学生を教育するかたわら、メディアアーティストとして活躍しています。キャリアクラフトでは、先生でもあり芸術家でもあるという異色の経歴を持つ川北先生のキャリアを2回にわたってお届け!
第1弾は教育者・研究者としてのキャリアにフォーカスしました。
【アーティスト編】川北先生インタビューは2025年1月に公開予定!
川北輝さん
1998年生まれ、広島県出身。松山東雲短期大学現代ビジネス学科助教。修士 (知識科学)・臨床心理修士 (専門職)。公認心理師。2023年4月に松山東雲短期大学の助教に着任。働きながら、2024年3月に北陸先端科学技術大学院大学 (JAIST) を修了。学生に情報デザインや3DCGを教えるかたわら、メディアアーティストとしても活動中。専門はテクノロジーを用いた支援研究や感性工学、ヒューマンコンピュータインタラクション (HCI)。2023年度笹川科学研究奨励賞受賞。
ー川北先生は様々な方面で活躍されていますが、学生時代は何を勉強していたのですか?
広島国際大学の心理学科で、色の癒し効果や犯罪心理学の研究、来談者中心療法や認知行動療法の勉強などをしていました。また、人の感性をデザインに活用する感性工学を教授から学んでいました。最終的には高齢者偏見を低減するための研究で卒論を書いて、卒業研究優秀発表賞をいただきました。
高校生のときから心理学に興味があり、公認心理師になりたいと考えていたので、国家資格取得の環境が整っている大学に進学しました。
ー高校の頃から将来を考えて進学先を決めたんですね!心理学の面白い部分はどこですか?
目には見えない曖昧な人の気持ちを科学的に論理立てて検証していくという実験プロセスが面白いですね。また、心理学の研究の成果が僕たちの生活に溢れている差別や偏見を減らせる可能性を秘めている点にも興味を抱きました。
大学で3年間心理学を学び早期卒業して、心の専門家を養成する専門職大学院に認定された広島国際大学の実践臨床心理学専攻に進学し、臨床心理修士 (専門職) の学位を得ました。その後、目標だった公認心理師の資格も取得することができました。
ー早期卒業したんですか!?
はい。広島国際大学の心理学科では、提携の専門職大学院への進学を条件に早期卒業制度があるんです。僕が在学していたときは、大学3年次終了時点まで累計GPA3.5以上を維持すること、単位を124単位取得済みであること、卒業研究を達成すること、専門職大学院の入試に合格することが早期卒業の要件でした。
入学当初から、大学院の専門的な授業や実習でより心理学を学びたいと思っていたので、早期卒業を目指して計画を立てて授業を履修していました。最終的に182単位を取得して卒業しました。
ー3年間で182単位取得ってすごいですね…!しかもGPAの3.5以上(※)なんてなかなか維持できないですよ
(※GPAは大学の成績評価を示す指標。平均は2.4〜2.8と言われている)
早期卒業制度は確かに簡単にクリアできるものではありませんでしたが、心理学の勉強や研究が好きだったので楽しんで講義を受けていました。
専門職大学院進学後は、病院や福祉施設、中学校などで経験を積みました。悩みを抱えたクライエントさんの心理カウンセリングや心理アセスメントに携わりながら、大学生のときに教わっていた感性工学の教授のもとで研究活動も続けました。
実際に心理支援を行うなかで心理学を用いて人々の抱える問題を解決したいという思いが強くなった一方、一対一の心理支援の限界も感じました。
ー限界ですか?
はい。一対一のコミュニケーションで支援できるのは一人だけです。もちろん一人ひとりに向き合い心理支援を行うことはとても大切なのですが、それだけではカウンセラーが時間的に対応できるクライエントさんの数には限界があります。
そこで当時興味を持っていた「テクノロジー」を活用すれば、より多くの人に支援を届けられるのではないかと思い、北陸先端科学技術大学院大学(JAIST)に進学し、研究活動を本格的に開始しました。
※カジュアルカウンセリング…アバター等を通じて、いつでも、どこでも、気軽に悩みを相談できるシステム。アバターの中身は心の専門家やAIを想定している
ーテクノロジーを用いた心理支援とはどのようなものなのでしょうか?
僕はアバターやVR、生成AIなどのテクノロジーと心理学の知見を組み合わせています。例えば、アバターを通じて心理カウンセリングを行うことで、悩み相談の心理的ハードルを下げることができます。
テクノロジーを活用した心理支援に興味を持ったきっかけは、大学時代に取り組んでいた「VRで高齢者への偏見を低減する研究」でした。
高齢者に対する偏見をエイジズムというのですが、レイシズム、セクシズムに次ぐ第三の偏見として、当時からエイジズムを低減するために色々な方法が提唱されていました。
そんななか、偏見の低減に効果が期待できるものとして、パースペクティブテイキングという新しい概念が注目されていました。
ーパースペクティブテイキング…?
日本語では視点取得というのですが、ようは「相手の立場から世界を捉えてみよう」ということです。
高齢者の方が見ている世界をVRで擬似的に体験することで、相手の感情や抱えている問題点をリアルに想像できるようになります。
ーなるほど!相手の視点をVRで共有することで、より相手の立場に立って物事を考えられそうです。
そうなんです。僕はエイジズムを低減するVRパースペクティブコンテンツを開発するために、大学生の頃からプログラミングやVRを自分で勉強していたのですが、JAISTに入ってさらにテクノロジーやメディアアートが好きになりました。
ー2023年の4月から松山東雲短期大学の助教に着任されていますが、どうして心理士ではなく教育・研究の道へ進まれたのですか?
一番の理由は、テクノロジーでより多くの方に心理支援を届けたいと思ったからです。
もともとは、伝統的な心理学のアプローチで人々の抱える問題を解決したくて公認心理師を目指していましたが、先ほどお話ししたように専門職大学院時代の実習で従来の方法では支援できる人数に限界があると実感しました。
今以上に支援を拡大するためにも、テクノロジーの力を使った心理支援の研究をこれからも深めたいと思い、心理士ではなく助教になりました。
ー「心理支援で人を助ける」という目標を達成するために、アプローチを一対一の支援からテクノロジーによる支援に切り替えられたのですね
そうですね。
また、感性工学の教授やJAIST時代に師事していた教授たちの姿勢を見て教育者として後進を育てたいという夢もできました。
先生方は、国際会議で研究の発表をされたり、有名なジャーナルに論文を投稿したりしていて、とても研究熱心な方ばかりでした。そんな方たちのもとで研究をするなかで、研究者や教育者としての姿勢を学ぶとともに自分も将来は後進を育てていきたいと思うようになりました。
ー現在はどのような研究をしているのですか。
大きく2つのテーマを研究しています。
1つ目は、これまでにお話をしてきたようなテクノロジーを用いたメンタルヘルス支援の研究です。最近はメタバースや生成AIを使った支援研究をすることが増えてきました。
2つ目は、感性工学やヒューマンコンピュータインタラクションの研究で、人々の感性に響く商品やサービスをどういうふうにデザインするのかを試行錯誤しています。
ー川北さんは2024年に笹川科学研究奨励賞を受賞されたんですよね!
はい。アバターやメタバースを活用した心理支援に関する研究で賞をいただきました。
ー具体的にどのような研究なのですか?
SGE (構成的グループエンカウンター) という心理療法をアバターやメタバースでより効果的にする研究です。
SGEとは、複数人の集団で行う心理療法で、他者との話し合いで自己理解を深めていきます。心の教育として小学校や中学校で導入されたりするのですが、グループのメンバー間でエクササイズというさまざまなワークに取り組み、意見や本音を打ち明け交流することで、自身のスキルを高める効果が期待できます。例えば、アサーティブという自己主張を適切に行うためのスキルを伸ばすこともできます。
本音を他者に打ち明けることで、自分の気持ちに気づくことってありませんか?
ー確かに友達に悩みを相談して自分の気持ちを言語化することで、悩みが整理されることってありますね!
そうなんです。その自己開示がSGEの肝なのですが、一方で自分のプライベートな悩みを面と向かって人に伝えること自体に抵抗感を覚える人は多いと思います。なので、アバターを通じて誰もが気軽にメタバース空間でSGEを受けることができれば、心の健康の保持増進につながると考えました。この研究では実際にその効果を検証し、国際会議で発表しました。
現在はアバターの中身を生成AIにしてSGEを行っています。もしメタバース空間で相談する相手が人間ではなくAIだったらどうでしょう。変に取り繕ったりせず、ありのままの自分の本音や悩みを打ち明けられると思いませんか?
ーなるほど!それなら人に言えない本音や悩みを伝えられそうです
もともとAIを活用したカウンセリングは1960年代から存在していましたが、それをSGEに応用しました。
従来のSGEのデメリットとして実施に労力とコストがかかることが挙げられます。集団で行う心理療法なので参加者を募らないといけませんし、実施場所の用意にコストがかかります。何より、思い立ったときに行動することができません。
対人不安を抱えている方の場合は集団の中で面と向かってコミュニケーションを取ることに苦手意識を抱えられているので、そもそもSGEの実施自体が困難です。
ですがメタバースやAIを使ったSGEだと物理的な制約もないですし、対人不安がある状態でも相手がAIなので心理的負担がかからずに参加できます。また、AIに特定のパーソナリティを持たせることで、本人が伸ばしたいスキルをさらに高めることが期待できます。
ーすごく画期的ですね!メタバースによるSGEは実際の現場で使われているのですか?
ワークショップのなかで使用したり、学生さんのオリエンテーションで活用したりしています。特に4月は大学に入ったばかりで緊張している学生さんも多いので、打ち解ける際にもおすすめです。ゼミ生もサポートしてくれて、より効果的な実施ができるようになってきました。
企業さんとのコラボレーションはまだなのですが、いつかはできたら良いなと思っています!
ー教育者としてのやりがいは何ですか?
やはり学生さんが学会で発表したり、コンペで賞を取ったりしたときには本当に嬉しく思います。去年は国際的な情報系・工学系の学会の日本支部が開催しているコンペに応募して最優秀賞を獲得することができました。
普段のゼミ活動でも学生さんの研究から刺激を受けることが多く、とても楽しいです。
ー川北先生の所属する現代ビジネス学科は何を勉強する学科ですか?
現代のビジネスに必要な知識を学んで実践していく学科です。
ビジネスに関わる分野を幅広く扱うので、例えば医療領域も学びますし、マーケティングも学びます。そのなかで僕の専門でもある情報デザインやAI、データサイエンス、メディアアートも取り扱います。
現代のビジネスに必要な要素を学んで、文化祭で実践したり企業さんとコラボレーションしたりして自分自身の力に結びつけていけるのが魅力の学科です。
ー今まで心理学や医療関係を勉強してきたなかで、なぜビジネス系の学科に行かれたのですか?
ビジネス専門というより、情報デザインの教員という立場で着任した形になります。
今の大学では心理学や医療はほとんど教えておらず、担当としてはビジネスにおける情報系の科目やゼミ、社会人講座がメインですね。心理学の研究プロセスで学んだことは、現在もデータサイエンスを教える際に役立っています。
ーそうだったんですね。また、心理学の先生になろうと思わなかったのですか?
あまり思わなかったですね。
もともと1番自分の興味があったのは心理学のはずだったのですが、研究活動を行うなかで心理学を活用しつつ、何か新しいものを作ったり、人の役に立つものを提供したりすることが自分は好きなんだと気づきました。
でもこれは心理学を学んだ上で成り立っていることなので、やはり自分の中のベースには心理や感性というものが強く根づいているように思います。機会があれば学生さんに心理学も教えたいです。
ー将来の展望を教えて下さい。
これからも教育者として情報デザインを教えつつ、将来的には大学院の教員として学生さんと研究活動を一緒に進めていけたらなと思います。
また、企業とのコラボレーションなどを通して、研究成果を社会に役立てることができたらいいなと思います。
ー川北先生、本日はどうもありがとうございました!
※記事内容は、取材当時のものです。
第2弾の【アーティスト編】川北先生インタビューは2025年1月に公開予定!
\川北先生の研究内容に興味を持った方はこちらもチェック!/
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