求職者と採用担当者をつなぐ”求人ポータルサイト”の仕組みと懸念点

年々求人市場が盛り上がりを見せる中、さまざまな特徴を持つ”求人サイト”が世の中に出回っています。



派遣業や人材紹介業を始めるのに求人サイトを開設したい



自社でも求人サイトを運営してみようかな・・・?
と考える企業も多いことでしょう。
そこで、20年以上求人ポータルサイト構築に携わり、自社でも求人ポータルサイトを運営する弊社の目線で、求人サイトの仕組みと実情、懸念点の解決案などを徹底解説していきます。
求人ポータルサイトの種類と特徴


求人ポータルサイトは、求職者と企業の採用担当者をつなぐサービスとして、「総合型」「特化型」「自社求人型」の大きく3つに分類されます。それぞれの特徴や利点について詳しく解説していきますね。
総合型求人ポータルサイト
総合型サイトは、業界・職種を問わず幅広い求人情報を掲載しています。
代表例として「マイナビ転職」や「doda」、「エン転職」、「タウンワーク」などがあり、新卒向け、転職層向け、アルバイト向けといったユーザー属性の大まかな区分はありますが、働き方や業種・職種において多様な求人広告を扱っています。
求職者にとっては選択肢が豊富で、比較検討しやすいという利点があります。
企業側は幅広い層へアプローチが可能なので、広範囲への認知拡大に利用されやすい求人サイトであると言えます。
特化型求人ポータルサイト
特化型サイトは、特定の業界や職種に特化し、求職者と企業のマッチング精度を高めるものです。
例えば、IT・Web業界向けの「Green」や、医療・介護系の「ジョブメドレー」、ハイクラス転職の「ビズリーチ」などがあります。
業界特化のため、求職者にとっては専門スキルについての求人情報が選びやすいのが利点です。
専門スキルを持つ人材が集まりやすいので、企業はよりターゲットを絞った採用が可能となるのが最大の特徴です。
自社求人型ポータルサイト(人材派遣・紹介会社運営)
人材派遣会社や人材紹介会社が独自に運営する求人サイトも存在します。
例えば、「テンプスタッフ」や「リクルートスタッフィング」、「doda X」などが該当します。
人材派遣会社の場合は、自社の登録スタッフ向けに求人を提供し、派遣・紹介予定派遣などの案件を見れるようにするサイトとして活用されています。
また、人材紹介会社の場合は「非公開求人」という登録者限定の案件を数多く取り扱っている場合が多く、求職者にとっては転職エージェントの支援を受けながら求人を探せる点が特徴として挙げられます。
掲載企業にとっては、求職者とのマッチングの精度が高くなるという利点が考えられます。
求人ポータルサイトの課金モデル


求人ポータルサイトのビジネスモデルは、「掲載課金型」、「成果報酬型」、「スカウト課金型」の大きく3つに分類されます。それぞれの特徴やメリット・デメリットを詳しく解説していきましょう。
掲載課金型
掲載課金型は、企業が求人広告を一定期間掲載するために料金を支払う方式であり、「マイナビ転職」や「doda」、「エン転職」、「タウンワーク」などが採用しています。
料金は掲載期間や求人情報の露出度(上位表示や特集枠など)に応じて変動するようです。
掲載課金型のメリット
- 求人掲載数の制限がなく、数多く求人を掲載することで、短期間でより多くの応募を集めやすくなる
- 1求人あたりの料金が固定されているため、採用コストの計算がしやすい
掲載課金型のデメリット
- 応募がなかった場合でも費用が発生する
- 求人情報の掲載の仕方・魅力の出し方などによって、応募が集まりにくいことがある
成果報酬型
成果報酬型は、求職者の採用が決まった際に料金が発生する方式であり、「ビズリーチ」や「Green」、「doda X」などで採用されています。
特に”人材紹介”の場合は、この報酬形態を採用している企業が多いでしょう。
採用決定時に決められた報酬(例:理論年収の20% など)を支払うケースや、入社後一定期間勤務した場合のみ料金が発生する仕組みもあります。
成果報酬型のメリット
- 採用できなければ費用が発生しないため、リスクが少ない
- 採用コストを成果に応じて最適化できる
成果報酬型のデメリット
- 採用単価が高くなりやすく、年収の20~35%程度を支払うケースもある
- 採用成功後に退職した場合のリスクを考慮する必要がある
スカウト課金型
スカウト課金型は、企業が求職者に直接アプローチできる”スカウトメール”を送信するために料金を支払う方式であり、「doda」や「ビズリーチ」、「Wantedly」などが導入しています。
1通あたりいくらと設定されているものや、100通でいくらという形で設定されているものもあります。
スカウト課金型のメリット
- 即戦力となる人材にピンポイントでアプローチ可能
- 求人広告だけでは出会えない層へリーチできる
スカウト課金型のデメリット
- メールを送っても返信がない場合、費用対効果が低くなる可能性がある
- 採用担当者の対応スピードや質が、採用活動に大きく関わる
求人ポータルサイトにおけるAI活用


近年、求人ポータルサイトでは「AI活用」が進み、求職者と企業のマッチング精度向上や業務効率化が実現されています。AIを活用した主な機能について解説していきますね。
求人マッチングの最適化
従来の求人検索は、キーワードや職種などの条件に基づくものでしたが、AIは求職者の経歴、スキル、希望条件を分析し、最適な求人を推薦してくれます。
例えば「AIジョブサーチ」では、求職者がAIとチャットをするだけで希望求人が見つかるサービスを展開しており、手軽に求職者と求人を結びつける手助けをしてくれます。
スカウトメールの自動最適化
企業が求職者に送るスカウトメールも、AIにより最適化されています。
例えば「Zキャリア」では、AIを活用したダイレクトスカウトサービスを展開しており、ダイレクトスカウト業務におけるターゲット設定やスカウトメールの文面作成も候補者にあわせてAIが自動で代行・最適化するなど、ターゲット設定から応募獲得までの一連のダイレクトスカウト業務をAIが代行することが可能となります。
求人ポータルサイトをこれから開発したい企業担当者様へ


では、求人ポータルサイトを開発したいと考えている企業担当者にむけて、「開発するときに考えておきたいこと」や「サイト運営における懸念点の解決案」について触れていきます。
開発するときに考えておきたいこと
まずは、開発するときに事前に考えておきたいことを4つ、見ていきましょう。
開発するときに考えておきたいこと
競争が激しい市場での差別化
求人ポータル市場は大手企業がすでに強固な地位を築いており、新規参入には独自の強みが必要となります。
特に、特化型求人サイト(業界・職種特化)やAIを活用したマッチング精度向上など、差別化戦略が求められる傾向にあるでしょう。
どのように他社と差別化するかによって、これから新規で参入する企業にも唯一無二の地位を確立できるチャンスとも言えます。
採用企業・求職者の獲得難易度
求人ポータルは求人掲載を行いたい企業側と、求職者の両方の登録がないと成立しません。
企業の求人掲載数が少ないと求職者が集まりにくく、求職者が少ないと求人を掲載しようと思う企業が少なくなるため、求人掲載企業と求職者の両方を集めやすくする仕組みが必要となります。
そのため、「無料掲載の期間を設ける」や「スカウト機能を充実させる」など、初期の集客戦略が求人サイト運営の成功のカギとなります。
集客戦略として「キャンペーン」を行うほか、「Web広告」や「SEO対策」等をうまく使ってユーザーを増やしていきましょう。


AI・システム開発コストと運用負担
最新の求人ポータルではAIを活用したマッチングやスカウト自動化が主流ですが、これには高額な開発費や運用コストがかかります。
また、企業の採用ニーズに合わせた検索機能や応募管理システムの精度向上も求められるため、実装したい機能が多くなればなるほど開発コストがかかってしまうことに注意しましょう。
しかし、開発において”コストをかけること”だけが生き残るための選択肢ではありません。
低コストで始める場合は、「Indeed」や「Googleしごと検索」など、他の求人サイトと連携して集客しやすくするなどの方法も検討するといいでしょう。
法規制・個人情報保護、審査体制などの対応
求人情報の取り扱いには「職業安定法」や「労働基準法」などの法規制が関係します。
求職者の個人情報を扱うため、プライバシーポリシーやデータセキュリティ対策も必要ですね。
さらに、不適切な求人の掲載を防ぐための審査体制の構築もしっかり考えておく必要があります。
求職者が信頼できる情報を得られないと、サイトの評価が下がってしまいます。
給与の実態とは異なる情報やブラック企業の求人、虚偽の待遇条件などを防ぐため、企業審査やユーザーからの通報機能の設計が必要となるでしょう。
サイト運営における懸念点の解決策
では、実際にサイトを運営する際に考えられる懸念点について、どのように解決すればいいかを考えてみましょう。
サイト運営における懸念点の解決策
競争が激しい市場での差別化を図る
新規参入者が成功するためには独自の強みを明確に打ち出すことが必要です。
他社との差別化を図り、持続的な競争力を確立するための具体的な解決案を出してみましょう。
ニッチ市場を狙う
- ITエンジニア、介護・医療、建設、飲食など特定の業界に特化する
- スタートアップ、外資系企業、地方企業限定の求人サイトなど、特定の企業規模に絞る
- リモートワーク、副業、時短勤務など、特定の働き方に特化する
専門的なコンテンツを充実させる
- 転職ノウハウ、キャリアアップ情報、業界の最新トレンドを発信
- エキスパートや業界経験者のインタビュー記事を掲載
- 「未経験歓迎」や「経験者向け」などターゲット層を明確にし、適切な求人情報を提供
採用企業・求職者の獲得
求人ポータルサイトの運営には、企業と求職者の両方がバランスよく集まる仕組みが不可欠です。
この課題を解決するための具体的な解決策を出してみましょう。
掲載企業側の特典を用意する
- 新規企業向けに無料掲載キャンペーンを実施
- 最初の100社に無料スカウトメール権限を付与
- 企業ページを特集記事として掲載し、求職者への露出を強化
- 初期に参入した企業の採用成功事例をインタビュー記事として公開し、信頼性を向上
求職者向け特典を用意する
- 登録するだけでキャリアアドバイスレポートを無料提供
- 企業とのオンラインイベントを開催
- 転職成功者の体験談を掲載し、リアルな声を伝える
- 匿名登録・企業側からの直接オファー(スカウト)を増やし、求職者のアクションを促す
マーケティング戦略を考える
- Google・SNS広告の活用
- SEO対策・ブログ記事による流入増加
- 「Indeed」や「Googleしごと検索」など他の求人サイトと連携して集客しやすくする
- 求職者と掲載企業のマッチングイベントなどを導入し、継続利用を促進
法規制・個人情報保護、審査体制の対応について
求人ポータルサイトは、職業安定法や労働基準法への対応、求職者の個人情報保護、求人内容の信頼性確保が求められます。
これらを怠ると、法的リスクが発生するだけでなく、サイトの評価が低下し、企業・求職者双方からの信頼を失う可能性があります。
そこで、具体的な解決策を出してみましょう。
法規制の遵守とコンプライアンス対応
- 「職業安定法」や「労働基準法」などの法規制について、専門家の監修を受ける
- 弁護士や労務管理の専門家を顧問に迎え、定期的に法令対応のチェックを行う
- 厚生労働省のガイドラインに基づいた運営基準を策定
- 職業紹介事業許可の取得(必要な場合※)
- 求人掲載ガイドラインの作成と公開
※「単なる求人広告サイト」なのか「マッチング仲介業」なのかを明確に整理して判断する
参考:求人情報・求職者情報の提供(募集情報等提供)と職業紹介の許可等が必要な場合の区分について|厚生労働省
個人情報保護とデータセキュリティ対策
- プライバシーポリシーを策定し、適切に開示
- データの暗号化(求人情報・個人情報はAES暗号化、通信はSSL/TLSを使用)
- アクセス制限の導入(企業側が不要な求職者情報を閲覧できないよう制御)
- 多要素認証(MFA)の導入(不正ログインを防ぐ)
- 定期的なセキュリティ監査・脆弱性診断を実施
※専門的な内容のため、詳しく知りたい場合は開発会社に問い合わせると良いでしょう
求人情報の信頼性を確保するための企業審査
- 企業登録時の審査プロセスを設ける
- 求人内容の監視・審査体制の強化(AI+人の目で求人審査を行うハイブリッド方式など)
- 求職者からの通報機能を実装
法規制・ガイドライン違反時のペナルティを設定
- 違反行為が発覚した場合のペナルティルールを明確化
- 虚偽の情報掲載が発覚した場合、契約解除となる可能性がある旨を明記
まとめ
求人サイトの仕組みと実情、懸念点の解決案などを徹底解説してみました。
求人ポータルサイトを運営する上で、考えておくべきことは多くありますが、うまく他社との差別化ができれば、採用市場が活性化している昨今の波に乗ることができるでしょう。
弊社では、求人サイト構築パッケージ「BizNext」や、ポータルサイト構築パッケージ「セルバポータルサイト構築CMS」、人材紹介・人材派遣会社さま向け「求職者集客支援サービス」をご用意しております。
また、開発会社については「SELECTO」にて、開発会社への相見積もりが無料で取れるサービスも行っております。ぜひご検討くださいませ。

