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近年、求人市場において「釣り求人」や「おとり求人」と呼ばれる求人情報が多発しているのをご存知でしょうか? これは、求職者の時間と労力を無駄にするだけでなく、労働市場全体の信頼性を損なう重大な課題となっています。
実は筆者である私も、おとり求人に出会ったことがあり、無駄足を踏んだ経験がありました。
本記事では、おとり求人の特徴や見分け方、その違法性について詳しく解説し、求人サイトを運営する弊社の目線で「どのように求人を出すのが効果的か」について見ていきます。
では「釣り求人」と呼ばれる求人がどのようなものか、さまざまな面から考察していきましょう。
「釣り求人」とはどのようなものでしょうか? まずは世の中にどんな釣り求人が蔓延っているのかを見てみましょう。
つまり、”ウソの求人”ということですね。
特徴を以下にまとめておきます。
ちなみに私が出会った釣り求人は、面接しますと言われて会場へ向かったものの、面接ではなく社員との座談会が始まりました。
その座談会で、応募していたのとは別の仕事をさも魅力があるかのように語られ、「どちらの仕事で応募されますか?」となぜか判断を迫られたというものです。
私は元々応募していた仕事を選んだのですが、その日は面接がなく、後日面接を改めて行いますとのことで当日は解散。
しかし、その後連絡が来ることはなかった、という新しいタイプの釣り求人でした(笑)
では、これら釣り求人が「なぜ発生するのか」について触れていきましょう。
2024年現在、求人市場はまだまだ厳しい状況が続いていると言えます。
有効求人倍率は1.24倍(2024.7月時点)で、求職者にとっては求人数が多いために”選び放題”とも言える状態になるのですが、採用活動をしている会社にとっては、なかなか自社の求人が求職者に選ばれず、採用活動に苦労する時代だと言えます。
そんな状況でも、どうしても採用活動を進めなければならない。
そうなると、求職者を集めるために、企業は求職者に魅力を感じてもらえるような”戦略”を立てようと考えます。
その戦略の一つとして、「釣り求人」が採用されるわけですね。
確かに、その方法で求職者は魅力を感じ、応募自体は増えるかもしれません。しかし、実際その求職者は採用に至っているでしょうか?
また、”釣れた人”は実際に長く派遣登録をしたり、働いているのでしょうか?
多くの人が途中で違和感を感じ、見送っているのではないでしょうか?
魅力的に求人情報を掲載するのはいいことですが、誇大広告や分かりにくい表記で惑わしたところで本当に意味があるのかを、長い目で見て確認・検討する必要があると私は思います。
では、実際に釣り求人だと考えられる掲載求人の特徴について詳しく見ていきましょう。
求職者が釣り求人に最も多いと思われている特徴の一つは、給与や待遇が飛びぬけて魅力的に記載されていることです。
例えば、「軽作業しかしません!」と記載されていても、実際には”軽作業”とは言えないような危険な作業内容であったり、「月給50万円以上可能!」と記載されていても月給50万円に到達するには社内でのキャリアアップが必要だったりというパターンがあります。
はっきりとしたウソではなくても「こういうパターンもある」という情報をキャッチコピーなどの目立つ場所に掲載していると、求職者が情報を勘違いして応募し、実態と違うことがわかると、会社の印象を悪くなることがあります。
また、福利厚生や休暇制度についても、実態とは異なる好条件が提示されることもあるようです。
「急募」や「即日採用可」といった文言を過度に強調している求人は、釣り求人の可能性が高いと見られます。
これは、例えば派遣会社がこの文言を使った求人を掲載していて、求職者が応募した時に「もう充足したので別の求人を紹介しますね」と誘導されることも珍しくないからです。
理由がないのに「急募!」と謳っている求人情報を見かけると、求職者側としても警戒してしまうことは少なくないでしょう。
職務内容が曖昧に記載されていると、大抵の人は自分に都合の良い内容を想像するので、応募した後に「なんか違う」と感じ、釣り求人だったのかと思われてしまうケースがあります。
例えば、「マーケティング職」として募集している場合、「社内で戦略を思考することがメインのマーケティング」もあれば「市場理解と戦略提案をメインとする営業職」という風に捉えることもできます。
仕事内容が不明瞭だったり、詳細に記載していないと求職者を混乱させ、適切な職業選択を妨げる要因となります。
会社の詳細情報や具体的な雇用形態が明確に記載されていないと、釣り求人だと疑われることがあります。
求人市場には「非公開求人」というものがありますが、これは企業側の情報流出などを防ぐために人材紹介会社が非公開にしている求人情報のことで、自社で求人を掲載する際にこの方法を真似て掲載すれば、求職者はただ不安に思うだけとなるでしょう。
また、正社員募集と謳いながら、実際は契約社員やアルバイトでのスタートで「条件を満たせば正社員になれる」というケースもありますが、これもただ混乱を招くだけとなるでしょう。
「釣り求人」と検索すれば、”派遣会社の釣り求人”についての情報が数多く出てきます。そのくらい、「釣り求人」と「派遣会社」の関係は密接なものだと言えそうです。
しかし、なぜそのような情報が飛び交っているのでしょうか?
人材派遣会社の特性上、まずは派遣会社に登録をしなければ求職者は求人に応募することができません。
そのため、派遣会社としては”登録者を集めるため”に派遣会社の広告として求人広告を掲載することになります。
その求人内容が実際に存在する求人であっても、登録を行う前の求職者にはどうしてもタイムラグが発生し、早期に充足してしまう場合があります。
また、求人が充足したからと言ってすぐに掲載を取りやめることもできない場合があることから、応募が終了していても掲載され続けている場合があります。
魅力的な条件の求人ほど、派遣会社の広告塔として利用しやすい反面、すでに登録している求職者にその座を奪われる可能性が高いことから、求職者の「派遣登録したのに応募が終了したと言われた。結局釣りだったのか」という意見が出やすくなります。
そのため、必ずしも派遣=釣り求人が多い、ではありません。
では、釣り求人だと疑われる求人は、どの程度のものが違法性があると考えられるのかについて考察していきます。
求人掲載に関しては、さまざまなことが法律で定められています。
まずはどんな表示が義務付けられているのか見てみましょう。このわかりやすいチラシが参考になると思います。
とにかく大事なのは「虚偽や誤解を招く表示はしない」ということですね。正確な情報を、分かりやすく掲示すれば問題ないようです。
また、さまざまな法律で釣り求人の違法性が示されています。以下の法律文をご覧ください。
職業安定法(昭和二十二年法律第百四十一号)令和8年4月1日 施行
第六十五条 次の各号のいずれかに該当するときは、その違反行為をした者は、六月以下の拘禁刑又は三十万円以下の罰金に処する。
九 虚偽の広告をなし、又は虚偽の条件を提示して、職業紹介、労働者の募集、募集情報等提供若しくは労働者の供給を行い、又はこれらに従事したとき。
このように、「虚偽の広告」には罰金が科せられるので注意が必要です。
また、転職エージェントや人材派遣で求人を掲載するにあたって、紹介先・派遣先の従業員が勝手に釣り求人を掲載した場合であっても、紹介元・派遣元にも30万円以下の罰金が科されるのでご注意ください。
その内容は以下の通りです。
職業安定法(昭和二十二年法律第百四十一号)令和8年4月1日 施行
第六十七条 法人の代表者又は法人若しくは人の代理人、使用人その他の従業者が、その法人又は人の業務に関して、第六十三条から前条までの違反行為をしたときは、行為者を罰するほか、その法人又は人に対しても、各本条の罰金刑を科する。
また、虚偽とまではいかなくても、誇大広告や、分かりにくい内容になっていれば、景品表示法違反となる場合があるので注意しましょう。
〈景品表示法〉不当景品類及び不当表示防止法(昭和三十七年法律第百三十四号)令和7年6月1日 施行
第五条 事業者は、自己の供給する商品又は役務の取引について、次の各号のいずれかに該当する表示をしてはならない。
一 商品又は役務の品質、規格その他の内容について、一般消費者に対し、実際のものよりも著しく優良であると示し、又は事実に相違して当該事業者と同種若しくは類似の商品若しくは役務を供給している他の事業者に係るものよりも著しく優良であると示す表示であつて、不当に顧客を誘引し、一般消費者による自主的かつ合理的な選択を阻害するおそれがあると認められるもの
では、求人掲載において、違法となりうることを整理していきましょう。
これについては、タイトル通り「虚偽」であれば違法です。
例えば、元々採用枠がないのに”人気職種だから”と採用枠のない職種の求人広告を掲載したり、全く根拠がないのに「1年後には必ず年収1,000万円!」などと謳ってウソの求人広告を掲載したりなどです。
このような手法を使って求職者の目を引こうとすると「虚偽」となり6ヵ月以下の拘禁刑または30万円以下の罰金が課せられます。
「誤解を招く」というのは、すごく微妙なラインに思えるのですが、要するに”わかりにくい表示になっていないか?”ということです。
求人広告は、老若男女、さまざまな人が見るものです。その人たちが広告を見たときに、どの面から見ても同じ解釈ができるかどうかがとても大事なポイントです。
以下の例をご覧ください。
<誤解を招く求人広告例>
求人タイトル:未経験歓迎!マーケティング職/年収例600万円
給与:【給与モデル】年収600万円・課長(7年でキャリアアップ)
月給20万円~24万円
この表示、嘘はついていませんよね。でも、とても理解しにくいと感じませんか?
タイトルや給与欄の最初に【給与モデル】がきていると、人によっては「年収600万円もらえる仕事だ!課長採用だ!」と誤解しかねませんよね。
このように、表示がわかりにくいことによる「釣り広告」も存在するということですね。
この求人広告の場合は、月給と給与モデルの順番を入れ替えるだけでも、理解度が上がると思います。
求人広告での「誇大広告」というのは、特に条件面の表記で起こりうるので注意が必要です。
誇大広告にするつもりがなくても、結果的に誇大広告になっていることがあるので気を付けましょう。
<誇大広告と考えられる求人広告例>
・「1年で年収1,000万円も夢じゃない!」
⇒給与アップ制度はあっても、実際に実現した従業員が存在しない
・「軽作業だけで高給与・好待遇!」
⇒本当に軽作業”だけ”なのか、”高給与・好待遇”が何か不明点が多い
・「残業時間0分、毎日定時退社が当たり前!」
⇒全ての従業員がそうかと言えば当てはまらない場合は誇大広告となる
いかがでしょうか?
このような待遇で応募してくる求職者の質も考えてみてください。そうすると、違法求人広告にあたりそうな表現は自然と控えられるかと思います。
”誰から見ても同じイメージが描ける内容か”を意識して広告作成するといいでしょう。
「釣り求人」と思われるような求人広告を掲載する背景には、「求人が集まらない」といった原因が隠れていることが多いです。
では、どのような求人が求職者の目を引き、応募・採用へと繋がるのでしょうか?
詳しい内容は、ぜひ以下のブログを参考にしながら、御社に合った人材を採用するための採用活動にしていただければと思います。
釣り求人の特徴や見分け方、その違法性について解説していきました。
釣り求人を”意図的に”行っている企業と、そうでない企業が存在するかと思いますが、求職者にとっては意図があろうとなかろうと、その企業についての印象は悪くなってしまいます。
「どんな求職者が見ても嫌な気持ちにならないか?」という求職者の目線を想像したうえで自社のアピールを最大限行い、よりよい採用活動を行われることを祈っています。
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広告営業→誌面編集→販売接客→マーケティングと様々な経歴を持つ1児の母。
子育てしながらも、自分の想像力を活かした仕事がしたいと、マーケティング未経験者ながらセルバに入社。
日々勉強しながら、SEO対策などに従事。