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オフィスグリコとは、オフィスに専用のボックスを設置し、お菓子や軽食を配達スタッフが定期的に補充してくれるというサービスです。
グリコ株式会社が展開するこのサービスは、日本にある各オフィスで福利厚生の一環としても取り入れられています。
オフィスグリコのビジネスモデルはどのような仕組みなのか、また無人販売であることのリスクや考え方について、詳しく解説していきます。
オフィスにお菓子が置かれている。
このサービスによって、気軽にお菓子を食べてリフレッシュしたり、職場の仲間とコミュニケーションを持つきっかけになったりと様々なかたちで活用されているオフィスグリコですが、どのように成り立っているのでしょうか?
1997年、スーパーやコンビニ業界では、「インストアマーチャンダイジング」という商品の陳列や品揃えの構成を科学的に分析して販売促進に繋げていく手法によってサービスを展開していました。
そんな中、江崎グリコの相川さんは、ある疑問によって新しい視点に気付いたといいます。
素朴な疑問がよぎる。「メーカー志向で“グリコの商品”を見えるチャネルにいかに売るかだけでいいのか。お菓子を手にとって頂いているお客様(消費者)で接点が足りていないところはないのか。本当にこれでいいのか。」そんな時、江崎社長が打ち出した「消費者接点を多様化する」という方針が新たなプロジェクトの始まりとなった…。
引用元:『挑人/江崎グリコ 相川 昌也』・テクノサミット ものづくりの挑人たち
この疑問を解消すべく、当時市場調査を行うと、意外な結果に驚いたといいます。
それは、「お菓子の消費シーンの19%がオフィスでの消費である」ということでした。
お菓子は家庭で消費するもの、という固定概念が壊され、新しいサービスを展開するきっかけとなりました。
その後、大阪駅前第一ビルから、まずは訪問販売式でスタート。
100件の飛び込み訪問で60件のOKをもらったものの、そのほとんどに「来てもいいよ」と言われ、それが「来なくてもいいよ」に聞こえてしまったという経験から、訪問ではなく「置き菓子」にするのはどうだろうというアイデアが生まれ、今日のオフィスグリコのスタイルが確立していきました。
2002年にオフィスグリコが本格スタートし、現在約10万台の設置が全国の各オフィスで行われています(2024年7月時点)。
たくさんの人や企業に笑顔を届けるサービスが展開され、ここまで大きく広がるのは素晴らしいマーケティング視点と企業努力だなと感じます。
オフィスグリコの商品ラインアップは非常に多彩で、チョコレートやビスケット、グミ、さらには健康志向の軽食まで幅広く取り揃えています。
また、冷蔵庫契約をしている企業には、アイスやドリンクなどの提供も行っています。これにより、様々なニーズに対応できるようになっています。
引用元:『”置き菓子”は意外に男性に人気?!オフィスグリコを実際に設置してみた。』
また、他にもオフィスグリコのような「オフィス置き菓子サービス」が多数存在しています。
まずはオフィスグリコのサービスの特徴をまとめてみました。
また、他社のサービスはどのようなものがあるのかも、簡単にまとめてみました。
参考記事▼
オフィスグリコが存在することで、様々な企業が別視点で求められるであろうサービスを展開し、「置き菓子事業」が盛り上がっているのがわかります。
0から1を生み出した江崎グリコのすごさが垣間見えた気がします。
そんなオフィスグリコの運営を支えるのは、日々商品の補充を行う配達員です。どのような仕事内容なのでしょうか?
オフィスグリコの配達員は、指定されたオフィスに商品を届け、各企業に設置されたお菓子ボックスの中の在庫を確認して、必要に応じて補充を行います。
引用元:『”置き菓子”は意外に男性に人気?!オフィスグリコを実際に設置してみた。』
このような専用ワゴンにお菓子を詰めて運んでいるようです。
また、配達員は基本的にアルバイトやパートで構成されており、90%以上が女性スタッフ。
働き方について、このような記述もあります。
オフィスを対象としたサービスであるため、土日祝日、お盆や年末年始などが休みになり、子どものいる主婦も勤務しやすい環境。平均5年以上は就業を続けている。
引用元:第1回サービス大賞『働く人を応援する置き菓子サービス「オフィスグリコ」』
主婦が勤務しやすいことで、女性の雇用拡大につながっているようです。
参考にした求人記事▼
配達業務は体力を要するため、人によってはきついと感じることもあるようです。
特に、一度に運ぶ商品数が多いことや、オフィスが多くて移動が大変だと感じる場合は、負担が大きくなるとも言えます。
そんな課題を解決するべく、配達員の負担ができる限り少なくなるように工夫されているようです。
スタッフの使いやすさを考え設計されているワゴンには、さまざまなヒミツがあるそうで・・・。(中略)使う人が同じ位置に立ったままで、ワゴンが360度回転するようになっているんです。オフィスの廊下などあまりスペースがない場所でもすいすい方向転換できる仕組み。そのほか、足元には、段差を乗り越えやすいよう体重をかけてワゴンの先端を上げられるバーもついています。オフィス街を歩きまわるスタッフにとってはうれしい工夫ですね。
引用元:『”置き菓子”は意外に男性に人気?!オフィスグリコを実際に設置してみた。』・江崎グリコHP
また、きついと感じる点として「代金回収が100%ではない」ということも挙げられます。
また、サービススタッフが職場で信頼を得ていることが、95% という代金回収率の高さにつながっている。
引用元:第1回サービス大賞『働く人を応援する置き菓子サービス「オフィスグリコ」』
このように、95%の代金回収率ということは、あとの5%は・・・? それについては次の章で詳しく見ていきます。
前の章でも触れたとおり、代金回収率が95%のオフィスグリコ。
支払いは一部の企業(福利厚生として企業が支払うケース)を除いて、基本的にはお菓子を取った従業員が個人で行っているそうです。
そこで出てくる「あとの5%は盗み食いなのでは?」、「そもそも代金回収が100%でなくても成り立つの?」という疑問について詳しく解説していきます。
まずはこの記述を見てください。
代金回収はグリコが行うが、販売数量と金額が合わない場合でも、企業にその差額は請求しない。「野菜の無人販売でも90%の回収率でビジネスが成り立つ。オフィスグリコもそれを参考にした。現在、約95%の回収率になっている」と古藪社長は言う。
引用元:『売上高53億円を超えた! 「オフィスグリコ」が成功した3つの理由』・IT media ビジネス
このように、社長自らもこのビジネスモデルのリスクとして、盗み食いが発生する可能性は考えているものの、その中でビジネスモデルが近い「野菜無人販売」を参考にして最適な数字を導き、ビジネスとして運用していることが伺えます。
しかし、成り立つといっても、盗み食いはなくならないのが現状です。
そこで、どのような対策方法があるのかを具体的に見ていきます。
これは人の心理を利用する方法ですが、お菓子の設置場所がオフィスの隅っこではなく、従業員の目に留まりやすい、目立つ場所に置かれていたらどうでしょう。
万引きが死角となる場所で行われることを逆利用して、死角を作らないようにしたり、心理的に「盗み食いだとバレたらやばい」と思わせるような場所に設置するのも、対策の一つにしてもいいと思います。
また、2024年6月より、オフィスグリコの利用者専用アプリがスタートしました。
これにより、現金をその場で支払い忘れてしまった際の対策になったり、現金を普段持ち合わせていない人にとっても利用しやすいメリットが生まれました。
オフィスグリコのサービスは2002年に本格スタートし、それ以降たくさんのオフィスのコミュニケーションツールとして利用されたり、「置き菓子事業」のパイオニアとして様々な企業にも刺激を与え続けてきました。
さて、パイオニアとして進める新たなサービス展開はどのようなものがあるのでしょうか? 詳しく見ていきましょう。
日本には地震が多い。そんな特徴が、オフィスグリコのサービスを展開していく中で新たなニーズの創出となったそうです。
2011年3月の東日本大震災もオフィスグリコの新たなニーズを掘り起こすことになった。
それは、オフィスグリコを循環型備蓄品として利用するといった動きだ。東日本大震災発生直後、首都圏のコンビニやスーパーでは、食料や飲料が売れ切れになるという事態が発生したが、オフィス内に設置されたオフィスグリコは、従業員が社内にいながら食料や飲料を確保する手段として、重要な役割を果たしたという。
引用元:『売上高53億円を超えた! 「オフィスグリコ」が成功した3つの理由』・IT media ビジネス
これはおそらく、オフィスグリコを事業展開した当初には気付かなかったニーズでしょう。
しかしこの「置き菓子事業」が「備蓄」となる新たなニーズを掴み、「企業にとってなくてはならない存在」になっていきました。
オフィスグリコは、基本的に配達員が届けていくスタイルのビジネス。
そのため、従業員以外立ち入り禁止としているオフィスには、どれだけ従業員の要望があっても設置することができませんでした。
そんな中、2021年6月より新たなサービス展開を見せていました。
今回の新サービスでは、職場に専用ボックスや商品を発送し、お客様自身のセッティングによる“訪問しない”販売方法の実現や、QR決済による支払いに限定することで、従来対応できなかったサービスエリア外のお客様や、部外者の立ち入りが許可されていない環境のお客様も利用することが可能になります。
引用元:『あの「オフィスグリコ」が全国(一部地域除く)で利用可能に!コロナ禍での“訪問しない”販売方法を実現した新サービス「どこでもオフィスグリコ便」』・PR TIMES
この「どこでもオフィスグリコ便」というサービスが生まれたのも、「消費者接点を多様化する」という江崎社長が打ち出した方針によるものかもしれないなと思うと、消費者目線でのサービス展開がいかに世の中に求められるものなのかが分かります。
リモートワークを取り入れる企業が増えている昨今、自宅でオフィスグリコを楽しみたいという需要が発生するのも頷けます。そんな中、江崎グリコが販売したのが「おうちでオフィスグリコ」。
2024年7月現在は、売り切れとなり販売されていませんが、一時発売されて話題となりました。
この、何とも言えないカエルのかわいさ!笑
こんな可愛い設備が家にあれば、ついついお菓子を手に取り、カエルの口にお金を入れたくなっちゃいますね!
今回は「オフィスグリコ」のビジネスモデルについてマーケティング視点で見ていきました。
マーケティングではもちろん「事業として成り立つかどうか」、「ニーズのある市場に挑戦できるかどうか」も大切ではありますが、江崎グリコの「消費者接点」を重視する企業努力があってこそ、このように大きな成功を収めているのだな感じます。
「消費者視点で考える」。マーケティングにとって一番大切であり、またビジネスに集中していればしているほど置いてきぼりになりがちな視点。
「今このサービスは消費者の視点で取り組めているのか?」を常に頭に置かなければと、今回考えさせられました。
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広告営業→誌面編集→販売接客→マーケティングと様々な経歴を持つ1児の母。
子育てしながらも、自分の想像力を活かした仕事がしたいと、マーケティング未経験者ながらセルバに入社。
日々勉強しながら、SEO対策などに従事。