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日本の人材派遣業界は非常に活発で、多くの企業が派遣社員を利用しています。
そんな中、日本は世界で比べても人材派遣会社自体がかなり多く存在することに着目しました。
弊社セルバでも人材業界で事業を行っているので、その理由について詳しく探ってみます。
最近では、日本の人材派遣業界が「オワコン」と言われることが増えてきました。
「オワコン」とは、終わったコンテンツの略で、もはや需要が減少しているものを指します。
しかし、人材派遣は本当に「オワコン」なのでしょうか? 様々な視点で確認してみましょう。
まずは日本全体の人材派遣業界の推移をデータで確認してみましょう。
引用元:厚生労働省・派遣元事業所数の推移
このグラフにある「労働者派遣事業所」と「特定労働者派遣事業所」というものは、それぞれ別物になります。
昔、日本では、労働者の派遣は「労働者の供給」として禁止されていました。それが労働者派遣法によって、1986年に人材派遣が解禁となり、人材派遣会社を設立する企業が増えていきました。
こうして人材派遣会社が増えていく中で、「届出制」にあたる”常時雇用される派遣労働者のみを扱う事業”を「特定労働者派遣事業」、「許可制」にあたる”登録型の派遣労働者を1人でも扱う事業”を「一般労働者派遣事業所」といいます。
しかし、2017年(平成27年)に法改正があり、労働者を守るために厚生労働省の許可を必要とする「許可制」のみの一本化が決定し、人材派遣会社は翌年以降減少。「特定労働者派遣事業所」が令和元年には0社になりました。
現在は、44,438社の人材派遣会社が日本に存在しています(令和3年度時点)。
※参考資料:労働者派遣法 平成27年度の改正について
次に、労働者派遣事業の売上推移を見てみましょう。
引用元:厚生労働省・令和4年度 労働者派遣事業報告書の集計結果
これによると、人材派遣会社の数は減少しているのにもかかわらず、人材派遣会社の売り上げはどんどん伸びて右肩上がりになっているのがわかります。
このデータから見ると、人材派遣業界自体は「オワコン」とは言えなさそうですね。
今の派遣先はオワコン状態なんで、そろそろ次探そ。
— NAKI@原神垢 (@naki440629) June 22, 2024
うちなんて、おらん方がえぇやろ
と昨日(金曜日)思いますた
現在の状況。派遣なのでそろそろもたないと思います。そもそも今回の企業、「人件費がないから派遣を入れた」と派遣に向かって堂々と言う事のやばさに自覚ないオワコンぶり pic.twitter.com/gWrNy9cZTW
— えびあん🐰 (@Idv5mattari) July 5, 2023
こう言われやすいのは、派遣社員の待遇が改善されず、長期的なキャリアパスが見えにくいことが主な原因だと思われます。
では、実際にそうなのかを確認していきましょう。
これについては、まず法律を見てみましょう。
労働者派遣法の改正により、2020年(平成30年)から新しい制度がスタートしました。
派遣先の「事業所単位」での期間制限と、派遣労働者の「個人単位」の期間制限というものです。
これによって、派遣先企業にとっては、同じ人を同じ課で3年以上働かせることができなくなりました。
個人としては、同じ会社で3年以上働きたい場合、別の課に移る必要が出てきます。
これは、次のタイトル「スキルが磨けない」にもつながりそうですね。
上記タイトル「3年以上同じ職場で働けない」でも紹介した通り、3年以上同じ課でスキルを積むことができないため、1つのスキルをどんどん磨きたい!という人には不向きなようです。
しかし、別視点で考えてみると、企業にとっては直接雇用に切り替えるきっかけにもなります。
3年を超えた後、正社員などとして受け入れてもらえる可能性がある場合、「がんばって働いたら正社員になれるチャンスがある!」とも思えるので、コツコツとスキルをつけるチャンスであるとも捉えることができます。
これに関しては、まず厚生労働省のデータを確認してみましょう。
このグラフの「男女計」の「正社員・正職員」の賃金が平均で3,234,000円(年収)に対し、「正社員・正職員以外」の賃金平均は2,167,000円(年収)で、年収平均1,067,000円の差があることがわかります。
また、基本的に正社員は月給制や年棒制が多いのに対し、派遣社員は時給制が多いのも特徴です。
そのため、残業を許されなかったり、ボーナスがないことで、より給与が上がりにくくなっています。
参考記事▼
この記事からも読み取れるように、時給目安が1,200円~ 2,500円と、仕事内容によってかなり幅があるようです。
翻訳・通訳やIT・デザインなど、専門的なスキルが求められる職種は、比較的時給が高めです。
まず、派遣切りとは何でしょうか? この図をご覧ください。
この図を見ると、派遣会社と派遣先企業の派遣契約を打ち切ることを「派遣切り」と定義するようです。
また、派遣先企業が契約を打ち切った際は、有期労働契約の派遣社員の場合、やむを得ない理由がない限り解雇することは法律で禁止されており、解雇する場合も30日以上前に解雇予告を行わなければ、法律違反となってしまいます。
詳しい情報はこちら(厚生労働省の資料)
ここからわかることは
ということがわかります。
これまでの内容を振り返ると、「日本の人材派遣業界=オワコン」とは言いにくいのではないかと思います。
では、他国と比較して、日本の状況はどうなのでしょうか?
まずはイギリス。
この記事によると、イギリスの人材派遣会社は6,000~ 8,000社(2010年時点)だそう。
そしてその8割が専門職であり、会計やファイナンス、IT、薬品、法律、ヘルスケア、医師、看護士などであるといいます。
では、アメリカを見てみましょう。
この記事によると、アメリカの人材派遣会社は11,957社(2023年時点)だそうです。
また、市場シェアの集中度が低いようで、最大の企業はRandstad Holding NV(ランスタッド)。
同社のホームページ(https://www.randstad.co.jp/)を確認すると、事務や製造関係の仕事が多いようです。
イギリスは多くとも8,000社(2010年時点)、アメリカは11,957社(2023年時点)、そして日本は44,438社(2021年時点)の人材派遣会社が存在していることがわかりました。
また、上記のデータよりは古いのですが、2006年時点で、日本の人材派遣会社数は世界一だということが、下記データからもわかります。
引用元:https://www.jil.go.jp/foreign/jihou/2009_3/german_02.html
このように、日本の人材派遣業界の規模や依存度は異常に高いと言えます。
ここまでの市場規模となった背景は何でしょうか? 続けて見てみましょう。
企業が人材派遣会社を利用する最も大きな理由は、人件費の削減です。
正社員を雇用すると、給与以外にも福利厚生や退職金の支払いが必要となります。
しかし、派遣社員であれば、これらのコストを大幅に削減することができます。
また、派遣社員は契約期間が決まっているため、業績が悪化した場合は契約を終了するという選択もできます。
人件費を抑えるという点では、採用コストを抑えることができるというメリットもあります。
特に、繁忙期や特定のプロジェクトにおいて、短期間で多くの労働力を必要とする場合は、派遣社員を利用することで、企業は雇用リスクを分散し、より効率的な経営を実現することができます。
さらに、日本だけが特に人材派遣業界に依存する理由としては、バブル崩壊以降の経済的な停滞が続いていることが挙げられます。
企業はコスト削減を最優先に考えているため、正社員よりも安価な派遣社員を利用する傾向が強いといえます。
また、解雇にあたり、労働基準法でこのように定められています。
就業規則や労働契約書に明示されていたとしても「客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして、無効とする」と法律で定められています。
引用元:厚生労働省・労働基準法 解雇編
このように、日本の労働市場では、一度正社員として雇用すると解雇が難しいため、企業はリスクを避けるために派遣社員を選ぶことが多いと推測されます。
では、こんなに人材派遣会社が多いのは、儲かるからなのでしょうか?
参考にできる記事を見つけました▼
こちらによると、マージン率(人材派遣会社が派遣先から受け取る報酬-派遣社員に支払う賃金の差額の割合)は、エンジニアなどの専門的な職種では約30〜40%程度、一般的には20~30%程度となっています。
そこから、派遣社員に関する社会保険料や福利厚生費用などの人材管理費用や、人材募集にかかる費用、事務所などの賃借料、営業などの人件費、労働者のための相談受付などの運営費、労働者の研修・教育費用など、様々な経費が発生します。
人が多く関わるということは、それだけ多くの経費もかかってくるんですね。
そう思うと、この記事にもあるように、人材派遣会社がかなり儲かるとは考えにくいです。
人材派遣業界について詳しく見ていきましたが、様々な経済や法律の動きと連動していて、「オワコン」というよりもむしろ、現在進行形で”たくさんの人が働きやすくなるように工夫されている業界”だと感じました。
ここまでたくさんの人材派遣会社があるのも、人を資材にした経営が参入しやすいということもあるのかもしれませんが、利益が出やすいなどの理由からではなく、「もっと人にかかわる仕事がしたい」、「もっと人が働くことに貢献したい」と考える経営者の方が多いのかもしれません。
AI化が進んでも、人は変わらず働き続けます。
今後の人材派遣業界だけでなく、人材業界全体にも注目したいですね。
人材業界についてもっと知りたい方はこちら▼
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広告営業→誌面編集→販売接客→マーケティングと様々な経歴を持つ1児の母。
子育てしながらも、自分の想像力を活かした仕事がしたいと、マーケティング未経験者ながらセルバに入社。
日々勉強しながら、SEO対策などに従事。